AKB48は宝塚歌劇団を参考にして作られている。というのは割と有名な話ですが、今回は、この2つの非常に人気で、非常に特殊なグループ同士を比較してみたいと思います。

私は女性の集団心理みたいなものを観察するのが好きという質の悪い性格なので、どちらのグループに関しても、普通の人に比べたら割と詳しいような気がします。が、しかし、それぞれの「コア」なファンの方たちからすると、全然一般人という微妙な立ち位置であることも最初に告白しておきます。田野優花の好きな食べ物も知りませんし、悠真倫の音校卒業時の成績もわかりません。大体そんなレベルです。

まず、AKBも宝塚もよく知らない、という人でも、それぞれが「チーム」または「組」という複数の小グループによって構成されている、という事実はどこかで耳にしたことがあるのではないでしょうか。「いや、そんな事聞いたことはない」という人も沢山いるでしょうが、そういうことなのです。

恐らく、後発のAKBのプロデューサーを務めている秋元康氏は、チーム制を思いついた際に、宝塚の組および「組カラー」というものを多分に意識していたのではないかと想像します。ここで、「組カラー」なるものを聞いたことがない、という御方のために説明すると、組カラーとは、宝塚の5組(花、月、雪、星、宙)それぞれに特有の「個性」「特色」のようなものを表現する概念とお考えください。これも非常に曖昧な概念なのですが、少なくとも、多くの宝塚ファンは「組カラーは存在する(はず)」あるいは「組カラーは(できれば)存在してほしい」と考えていると思います。

<宝塚の組カラー解説>
ここで、私なりに思い描く、宝塚の組カラーについて少々解説してみます。ただし、これは時代を経るにつれて変わる部分もあり、また、ファンによってはちょっとイメージが違う、という場合もあります。軽く私の妄想が入っていることも否定できません。が、大体こんなものだと考えていただけると助かります。

◯花組:「相互不干渉の原則を貫く」
花組は宝塚の中で最も歴史が古い組です。厳密に言うと、それまで1つのグループだったのが、「花」と「月」に分かれて、花組が第一の組になったという歴史があります。(なので月組ファンは花組にどこか微妙な意識を抱いているような気がしますが、あまり触れないほうが安全)

花組には「ダンスの花組」というキャッチコピー(?)があります。これは、大浦みずきさんという偉大なダンサーの方がトップスターだった時代辺りからのイメージのようです。確かに黒燕尾服で男役が一斉に踊る群舞は、その組の実力が最も出やすいのですが、花組はこの群舞が非常に得意です。花組は「男役の宝庫」とも呼ばれており、伝統的に大人っぽい男役のスターを多數輩出してきました。私は、この「男役第一主義」というのが、花組の伝統を支えているように思います。

男役スターとしてのし上がるには、まず個性が大切です。先輩後輩とか同期とか、そういう人間関係を気にしていては、いつまで経っても出世できません。花組では、この「個性を活かす」ことができるキャラが伸びる印象があります。今では「理想の女性上司ナンバー1」などと称される真矢みき氏も、この花組の元トップスター。真矢氏の場合は、男役としては異例のロングヘアーであったり、つんく♂プロデュースで武道館コンサートを行ったり、篠山紀信撮影の写真集を出版したりと、まさしく破天荒そのものというスターでした。彼女のようなキャラクターが生き残れるのは、花組以外まず考えられません。

花組は、とにかく自立した男役像を獲得できなければ生きていけない世界なので、逆に言うと、組の中の人間関係は割とドライというか、「人様に迷惑掛けなければ、どうぞご自由に」的な所があります。なので、スター同士、相互不干渉の原則が貫かれている組とも言えます。

男役とは対照的に、娘役は伝統的な「いいお嫁さん」的な生き様を期待されるようです。花組トップスターの相手役となった娘役さんは、トップスターのファンから言いようのないプレッシャーが掛けられます。でも、そういった「期待」に外面的には応えつつ、だがしかし、そんなに簡単には自我が揺るがない人が娘役トップとして続く傾向もある気がします。ある意味、表現の仕方が異なるだけで、娘役にも男役同様に、「私は私」的な価値観が染み付いているのかもしれません。

少し長くなったので、今回はここで一旦切りたいと思います。